薬用植物が持つ不思議な力を、科学的に解明!
細川家ゆかりの薬用植物を今に
健児くん(以下:◆):植物園には、たくさんの薬用植物があるんですね!なんだか植物のいい香りもします。
矢原:この薬用植物園は、肥後細川藩の薬園「蕃滋園」(ばんじえん?1756年開園)の流れを汲んでいるんですよ。現在、標本園および樹木園に管理されている植物は、1000 種類以上もあります。矢原:日本だけでなく、ネパール、ラオス、ベトナム、カンボジアの薬用有用植物の調査を行い、保護、育種するだけでなく、その機能性などを解明し、植物にどういう化合物が入っているのか、人間の体に本当に効くのかなどを研究しています。植物には何百種類もの成分が入っており、同じ植物でも生息している場所や環境によって、入っている主成分のパターンや配合が異なっているため、どのようなパターンや配合が人間の体に有効なのかなどを、科学的に解明しています。また、一つの植物の中には、まったく作用の異なる2種類の化合物が入っている場合もあります。たとえば薬用ニンジンは、中枢神経を興奮させる化合物と、逆に働きを抑える化合物の二種類が入っているので、両方がバランスをとりながらうまく体に作用していきます。薬用植物は調べれば調べるほど、おもしろいですね。
薬用植物の不思議に感動
◆:西洋薬と漢方薬ってどのように違うのですか?
矢原:西洋薬は、基本的に1種類の化合物しか入っていないので、効き方がシャープなんです。それに比べて、漢方薬は何種類かの植物を混ぜていますから相乗効果でバランスよく、ゆっくりと効果を発揮するタイプ。現在は、西洋薬と漢方薬の併用は、臨床でもよく行われています。抗がん剤やエイズの治療薬などの強い薬は、副作用が強く、患者さんの体に負担が強いられます。医者からは、「薬が効いて、数値的にはよくなっています」と言われても、本人は体がきつくて動かないということも往々にして起こりうるんですね。そんな時に漢方薬を併用すると、食欲が増して食べられるようになり、生きる活力につながることがあるんですよ。
◆:植物の力ってすごいんですね!
矢原:興味深いのは、植物自身が自分の子孫を残すためにさまざまな工夫をしているんですよ。たとえば、ウメやアンズは熟すまでの期間、種の周りに青酸という毒性のある物質を作って、種を守っています。「まだ、食べてくれるな」と、植物が言っているわけですね。しかし、熟したら青酸はなくなり、動物に食べられることによっていろんなところに運んでもらうわけです。また、自分の樹の下で種が発芽しないように、葉っぱからべとべとした有害な物質を地面に落とします。我が子が自分の木の下で、自分よりも強くて大きい木になったら、自分の存在が脅かされるわけですよ。ですから、自分の木の下に、自分の子どもが育たないように、有害な物質を落とすんです。植物の世界は、よくできていますね。 ◆:植物の秘めた力を、一般の人たちに伝える取り組みもしていらっしゃいますね。
矢原:10年ほど前から、毎月第1土曜日に、「薬用植物観察会」を行っています。薬用植物園を歩きながら、植物の不思議な力や味や香りなどを、五感で体感していただいています。たとえば、砂糖の300倍の甘みを持つステビアの葉っぱをかじったり、虫さされのかゆみがとれる草を実際体験してみたり。「ひらめき☆ときめきサイエンス」という催しでは、小学生向けに水で50倍にふくらむ種子を観察したり、甘みが消える不思議な葉っぱを口にしてもらうなど、植物が持っている力を体感してもらい、子どもたちに大好評でした。また、月に1度、「やさしく傷寒論を読む会」や「初級漢方とハーブ」という勉強会もしています。
矢原:西洋薬は、基本的に1種類の化合物しか入っていないので、効き方がシャープなんです。それに比べて、漢方薬は何種類かの植物を混ぜていますから相乗効果でバランスよく、ゆっくりと効果を発揮するタイプ。現在は、西洋薬と漢方薬の併用は、臨床でもよく行われています。抗がん剤やエイズの治療薬などの強い薬は、副作用が強く、患者さんの体に負担が強いられます。医者からは、「薬が効いて、数値的にはよくなっています」と言われても、本人は体がきつくて動かないということも往々にして起こりうるんですね。そんな時に漢方薬を併用すると、食欲が増して食べられるようになり、生きる活力につながることがあるんですよ。
◆:植物の力ってすごいんですね!
矢原:興味深いのは、植物自身が自分の子孫を残すためにさまざまな工夫をしているんですよ。たとえば、ウメやアンズは熟すまでの期間、種の周りに青酸という毒性のある物質を作って、種を守っています。「まだ、食べてくれるな」と、植物が言っているわけですね。しかし、熟したら青酸はなくなり、動物に食べられることによっていろんなところに運んでもらうわけです。また、自分の樹の下で種が発芽しないように、葉っぱからべとべとした有害な物質を地面に落とします。我が子が自分の木の下で、自分よりも強くて大きい木になったら、自分の存在が脅かされるわけですよ。ですから、自分の木の下に、自分の子どもが育たないように、有害な物質を落とすんです。植物の世界は、よくできていますね。 ◆:植物の秘めた力を、一般の人たちに伝える取り組みもしていらっしゃいますね。
矢原:10年ほど前から、毎月第1土曜日に、「薬用植物観察会」を行っています。薬用植物園を歩きながら、植物の不思議な力や味や香りなどを、五感で体感していただいています。たとえば、砂糖の300倍の甘みを持つステビアの葉っぱをかじったり、虫さされのかゆみがとれる草を実際体験してみたり。「ひらめき☆ときめきサイエンス」という催しでは、小学生向けに水で50倍にふくらむ種子を観察したり、甘みが消える不思議な葉っぱを口にしてもらうなど、植物が持っている力を体感してもらい、子どもたちに大好評でした。また、月に1度、「やさしく傷寒論を読む会」や「初級漢方とハーブ」という勉強会もしています。
まずやってみる!“プチ行動”のススメ。
◆:先生は、なぜ薬学研究の道を選んだのですか?
矢原:私は、岡山県のブドウ農家の息子として生まれました。子どもの頃、ブドウ畑に行くと「同じ木なのに、環境によって、どうして味や形が違うのだろう」と疑問に思っていました。大学で有機化学や薬理学を学びましたが、大学院の試験で失敗したので、院では天然物化学を専攻し、本格的に生薬と向き合うようになりました。大学院では、人との出会いに恵まれましたね。植物の名前や分布、環境などの専門家がいましたから、その人たちと話をすると、自分の研究にさまざまな視点が生まれました。大学院には8研究室があったのですが、全部の研究室に私用のコップを置いてあったほど、いろんな人に話を聞きましたね(笑)。またほかの大学の先生たちとも交流して、いいなと思ったことはどんどん自分の研究に取り入れていきました。
◆:学生たちに望むことはありますか?
矢原:「思ったら、行動しろ」ってことですね。学生たちは、「こう思うんですけど???」と口では言うけど、なかなか実行に移そうとしない。でっかいことをしなくても “プチ行動”でOKなんですよ。研究もそうですが、実験の95パーセントは失敗するものです。なぜ失敗したのかをしっかり反省して、3回ほどトライすれば、うまくいくことが多いでしょう?人生も同じようなものですよ。また、自分の専門以外のいろんな分野に“人脈を作れ”と学生たちには言っています。わからないことがあった時に、質問できる知り合いがたくさんいることは、財産です。その知り合いがわからなくても、別の専門家につないでくれて、解決することも多いですからね。「権利ばかり主張しないで義務を果たすこと」も忘れないでほしいと思います。
◆:自分から声を掛けて、たくさんの人の意見を聞く勇気が必要ですね。僕も積極的に声を掛けていきます!ありがとうございました。
矢原:私は、岡山県のブドウ農家の息子として生まれました。子どもの頃、ブドウ畑に行くと「同じ木なのに、環境によって、どうして味や形が違うのだろう」と疑問に思っていました。大学で有機化学や薬理学を学びましたが、大学院の試験で失敗したので、院では天然物化学を専攻し、本格的に生薬と向き合うようになりました。大学院では、人との出会いに恵まれましたね。植物の名前や分布、環境などの専門家がいましたから、その人たちと話をすると、自分の研究にさまざまな視点が生まれました。大学院には8研究室があったのですが、全部の研究室に私用のコップを置いてあったほど、いろんな人に話を聞きましたね(笑)。またほかの大学の先生たちとも交流して、いいなと思ったことはどんどん自分の研究に取り入れていきました。
◆:学生たちに望むことはありますか?
矢原:「思ったら、行動しろ」ってことですね。学生たちは、「こう思うんですけど???」と口では言うけど、なかなか実行に移そうとしない。でっかいことをしなくても “プチ行動”でOKなんですよ。研究もそうですが、実験の95パーセントは失敗するものです。なぜ失敗したのかをしっかり反省して、3回ほどトライすれば、うまくいくことが多いでしょう?人生も同じようなものですよ。また、自分の専門以外のいろんな分野に“人脈を作れ”と学生たちには言っています。わからないことがあった時に、質問できる知り合いがたくさんいることは、財産です。その知り合いがわからなくても、別の専門家につないでくれて、解決することも多いですからね。「権利ばかり主張しないで義務を果たすこと」も忘れないでほしいと思います。
◆:自分から声を掛けて、たくさんの人の意見を聞く勇気が必要ですね。僕も積極的に声を掛けていきます!ありがとうございました。
(2015年3月28日掲載)
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