平成21年度熊本大学卒業式?修了式 式辞
本日、ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、理事?副学長?部局長と共に平成21年度の卒業式?修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。ご卒業?修了の皆様、卒業、修了おめでとうございます。
皆様が本日のこの式典に臨むことができますのは、第一に皆様自身の今日までの努力と研鑽の賜物であり、その努力に深く敬意を表します。
また、留学生の皆様方には、母国の期待を担い、留学を立派に終えられました。母国を離れての勉学には幾多の困難があったものと推察いたします。留学生の皆様には、おめでとう、Congratulation, と申し上げるとともに、これからも母国と我が国の架け橋となって活躍いただくことをお願いいたします。
もとより、諸君の今日がありますのは、ご家族の皆様や友人の協力と励まし、教職員や諸先輩の温かなご指導?ご助言、などの支援があったからに他ならないことは言うまでもありません。皆様もそのことを充分に認識しておられることと思います。皆様の脳裏には、お世話になった数多くの方々のことが思い起こされていることと思います。本日、皆様が手にされた学位記や修了証書は、いわば、お世話になった方々との共同作業の成果でもありますので、支えていただいた方への感謝とともに喜びを分かち合っていただきたいと思います。
この場をお借りして、本学を代表いたしまして、本日の卒業?修了生をこれまで深い愛情によって支えて下さったご家族をはじめ、ご指導?ご助言をいただいた教職員、諸先輩、友人の皆様、さらには日常生活を支えていただいた地域の皆様はじめ関係各位に対し、衷心より深く感謝申し上げます。
卒業生、修了生の皆様は、これまでの学生生活の中で、少なからず、1)自らの生き方の規範となる自己の形成、2)国際社会の中で生きるための様々な能力、3)社会の諸課題に対する問題意識や課題発見能力、さらには、4)その課題を解決するための専門力やその獲得法、そして、5)皆様の個性や専門力を駆使した課題解決能力や新しいものを創りだしていく創造力、6)仲間達と協力して課題解決に向けて必要な事柄を実行していく力、など、様々な人間力や専門力の基盤を獲得してこられたと思います。これからも不断にこれらの能力に益々磨きをかけていただきたいと思います。
さて、皆様の卒業?修了にあたり、3つのことをお願いしておきたいと思います。
まず、1点目は、本学卒業?修了であることに「自信と誇り」を持っていただきたいということです。
私たち教職員は、皆様の人生の大切な時期に関わりを持てたことを「誇り」に思っています。皆様一人一人を「誇り」に思っています。本学は、「在学生、卒業生、教職員、そして市民の皆様が誇れる大学」、「社会から憧れられる大学」を目指して努力しています。本学が社会から「誇られ、憧れられる存在」となるための一番の早道は、皆様が社会で思う存分活躍いただくことです。皆様が熊本大学の卒業生?修了生として、「自信と誇り」を持って、それぞれの立場で自らの夢を大きく実現されて、その夢の実現を通して大いに社会に寄与されることが、本学の存在感や名を高めることになります。皆様には、国立大学の教育?研究環境の整備等を通して、国民の皆様から相当額の資金(税金)の投資があった訳ですから、その点を常に心して、これからは皆様の能力や活動によって社会に恩返しするという気持ちを持っていただきたい。
先の「事業仕分け」では、私たち一人一人が、自らの社会における活動の意味や必要性を、自らの言葉で社会に向かって語ることの重要性を教えてくれました。これからは常に自らの活動の意味を考えることが必要になります。しかし、そのことが、皆様のこれからの人生を豊かにすることにもなりますし、人生の指針を与えてくれるものと確信しています。
2つ目は、「変化を進んで受け入れ、基本に立ち返って新しい時代を創る」ということです。自らが主役であり主体として時代を創るということを忘れないで欲しいと思います。
今日の激変する社会にあって、目先のことに目を奪われること無く、物事の本質を見極めることが重要です。昨今の科学技術の急速な進展や産業構造の変化、それに伴う世界規模での経済や社会構造の急速で大きな変化が進行するなど、先の見えない社会が私たちを取り巻いています。しかし、皆様が大学で学んだ「学術の基礎」の部分は、いかなる社会の中でもその本質をとらえ将来を導きだすための指針を与えるものであるはずです。しっかりした基礎の上に立って、ものごとの全体的な動向?方向性とその動きの底流にある本質を考えていくことを大切にしていただきたい。
かつては、大学で学んだ専門領域を基礎に一生を一つの領域の仕事で過ごすことが出来た時代もありました。しかし、日々変化する今日の社会においては、社会の動きは、精々10年、あるいは、もっと短い期間の中で大きく変化しています。従って、長い人生の中では、担当する仕事も、3つ、4つの異なる課題に、向き合わなければならなくなります。従って、これからは変化に対して受け身ではなく、自ら進んで変化に対応できる力が必要になります。時代状況を敏感に感じとり、自分の進むべき道を適切に修正変更することも必要です。大学を出ても生涯「学習し続ける」ことが必要になります。大学は、これからも皆様を支援したいと思います。
時代は、唯々頑張れば良かった時代から、その意味や、生じる可能性のあるリスク等をも問いただしながら、新しい価値を自ら創りだしていくことが求められる時代へと変化しています。しかし忘れてはならないことは、いつの時代でも社会を創っていくのは皆様を含めた我々自身であることです。我々自身が新しい価値を創造しながら、時代を創っているということを忘れないで欲しいと思います。
社会に出て行かれる皆様には、本学で培った力を存分に発揮し、いかなる困難にも怯むこと無く、社会やそれぞれの専門分野の基本に立ち返って新しい時代を創りだすことに挑戦していただきたい。困難に立ち向かうにあたっては、「なぜ自分がやらなければならないのか」と消極的には考えないで欲しい。「自分がやらなくて誰がやるのか」と考えて欲しい。皆様には社会の変革、イノベーションを担う者としての役割を果たしていただくことを期待しています。皆様には、それができると確信しています。
3つ目は、「戦うべき相手は自分である」ということです。
まだ記憶に新しいバンクーバーオリンピック、それに続いて行われたパラリンピックでの最高水準のレベルの高い戦いは数々の感動を与えてくれました。スピードスケートの岡崎選手やモーグルの上村選手は、残念ながらメダルを手にする事が出来ませんでしたが、オリンピックに至るまでの努力は想像を絶するものがあります。それでも、試合が終わった後の会見で、さらに上を目指して次に挑戦するとコメントしています。フィギュアスケートの日韓の戦いは見応えのあるものでした。ここでも試合後の選手達から聞かれる多くの言葉は、私たちに大切な事を教えてくれました。高度な技術の収得とそれを支える強靭な精神を鍛える日々の戦いは「自らとの戦い」であり、「すばらしいライバル」の存在が、最高水準の戦いを支えていたことを教えてくれました。最高水準の戦いを進めるための真に戦うべき相手は、競争相手ではなく、むしろ「自ら」であることです。パラリンピックに出場された選手の皆様の日々の戦いは、さらに熾烈なものがあります。しかし、選手の皆様には笑顔が絶えません。自らの夢や志を成し遂げるためには、それを支えてくれる多くの方の存在とともに、自ら努力を継続しなければなりません。そのときに戦うべき本当の相手は自らの中にあるということを選手の皆様の笑顔が語っています。皆様は、今日の卒業にあたって、自らを振り返って、改めてこのことを心に刻んでいただきたいと思います。そして良き友であり、ライバルを見つけて欲しいと思います。
皆様の卒業年度である平成21年度は、新制熊本大学設立60周年でした。お祝いの式典やいくつかの記念イベントを開催させていただきました。本学は、医学部は再春館から数えれば250年余、第五高等学校から数えて120年余の歴史と伝統がありますが、1949年に熊本医科大学や第五高等学校等6つの教育機関が一つになってできた新制熊本大学から数えて、60周年ということで、還暦のお祝いをしたわけです。教育(すなわち人材の育成)の本質は、第五高等学校の教員であった夏目金之助(漱石)の言葉である「夫レ教育は、建国ノ基礎ニシテ、師弟ノ和熟ハ育英ノ大本タリ」は、昔も今も変わりません。
本学の歴史。財産の中にこの他にも教育に関するすばらしい言葉を数多く見いだすことができます。ここで、その中から一つ紹介して皆様に贈る言葉としたいと思います。前身の第五高等学校の第三代校長で講道館の創始者である嘉納治五郎先生が勝海舟に懇願して揮毫してもらったという書にその言葉があります。ご覧になった方もおられるかと思いますが、今も本学の五高記念館に原本が保存されています。
「入神致用(にゅう しん ち よう)」と書かれています。これは人が道理を極めて神妙の境地に入れば、社会に対して大きな働きをすることができるという意味です。「入神致用」。本日、本学を巣立たれる皆様に、心身の健康には充分留意された上で、この言葉のように、道理を極め、大きく育って、社会に恩返しをして欲しいという気持ちを込めて、この言葉を餞(はなむけ)の言葉として贈ります。
熊本大学も、巣立っていく皆様とともに、次の60年、100年の歴史を作るべく、これからも時代を先導するリーダーとしての役割を果たします。人材育成、知の創造を通して、地域や国際社会への貢献を進め、国際的に存在感を示す大学として、益々尽力して参ります。しかし、本学の真の評価は、卒業生の皆様一人一人の人生にあります。皆様が社会で高く評価されれば、すなわち本学が高く評価されるということです。重ねて皆様のこれからの輝かしい人生を祈りつつ、卒業、修了に際しての心からの祝辞といたします。
最後に、皆様の元気な声を聞いて巣立っていく皆様の将来を祝いたいと思います。一人ずつのお名前を読み上げて返事をいただきたいところですが、学部や研究科毎に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げます。その場で起立してください。どの学部?研究科を出ても、社会からは熊本大学の卒業生?修了生ですので、一つの同じ仲間です。従って、全ての学部卒業生諸君は、学部学生合計の人数を申し上げた直後に、全員で右手を大きく掲げて、元気よく“オー”と応じてください。大学院修了生も同じです。学部と大学院2回に分けて応じていただきます。声の大きさが皆様の未来の明るさです。
まず学部です。【文学部184名】、【教育学部及び特別支援教育特別専攻科?養護教諭特別別科347名】、【法学部193名】、【理学部185名】、【医学部248名】、【薬学部40名】、【工学部581名】、以上、学部卒業生 合計1778名!!
(オー!!)すばらしい元気をありがとう。
次は大学院です。【文学研究科修士6名】、【教育学研究科修士 51名】、【法学研究科修士2名】、【社会文化科学研究科修士71名、博士15名】、【自然科学研究科修士408名、博士31名】、【医学教育部修士21名、博士40名】、【保健学教育部修士19名】、【薬学教育部修士79名、博士10名】、【法曹養成研究科法務博士16名】、以上、大学院修了生 合計769名!!
(オー!!)ありがとうございました。
おめでとうございました。
以上、総勢【2547名(内、留学生65名)】の皆様一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆様の輝かしい未来を祝福します。
おめでとう!! Congratulation ! and Bon Voyage!!
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