本を読む楽しさを毛糸アートで表現!
毛糸で表現する「読む楽しさ」
健児くん(以下◆):今回の企画は、どのようなものだったんですか?辛川さん:ニューコ?ワンさんから、研究室の松永准教授にお話がもちかけられたと聞いています。全5回で、1カ月ずつアート作品を展示する企画です。1回目は卒業された先輩方の作品を展示し、2回目と3回目で、私たち学生が作成した作品を展示することになっています。
松本さん:TSUTAYAさんは、本を販売している店舗です。それにあわせて「本棚で読む力、書く力を育てる」というテーマをいただきました。松永先生のアイデアで、材料として使う素材は「毛糸」ということに決まりました。
金﨑さん:いつもは絵画制作が主なので、最初は「毛糸で作品ができるの?」と驚きました。でも、作品を展示するTSUTAYA BOOKSTORE菊陽さんの壁には絵の具で直接、絵を描くことはできません。なので、壁に空いている小さな穴に棒を差し込み、毛糸を引っ掛ける手法で作品を作成することになりました。
松本さん:制作は2つのグループに分かれて行いました。僕たち第1グループは4人だったのですが、それぞれで考えたものを共有し、先生に見てもらうことから始めました。そこで選んだものをいくつかニューコ?ワンさんに見てもらってご意見をもらい、さらに練っていきました。
作品づくりには見る人の感じ方も重要
辛川さん:最初のデザインの中には、本棚を幾何学模様のように見せるために、斜めの線を組み合わせて作ったものもありました。それに対して「本棚が崩れてるように見え、熊本地震を思い出して不安になる人がいるかもしれない」という意見をもらったんです。自分が思っていた効果はそういうことではなかったんですが、いろんな見方を考えないと、まったく逆の効果を生むこともあるんだな、と思いました。
金﨑さん:見てもらう、ということを考えると、見る人にとって大きなマイナスを感じる点がない作品にしたいほうがいいんだな、と思いました。最終的に「本で編む」というタイトルで、開いている本から花や鳥などいろいろなものが飛び出してきているという構図に決定しました。
松本さん:お話をもらったのはちょうど教育実習の直前でした。新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として対面授業もなく、みんなで集まって話し合えなかったので大変でした。LINEで連絡をとりあったのですが、アイデアを出し合ったり、まとめたりするのはなかなか難しかったです。先に展示されていた先輩たちから「展示を見に来ている人も多かった」と聞いて、プレッシャーも感じていました。
◆:作品はどのように作成したんですか?
辛川さん:制作期間は1日でした。最初に材料をそろえたりしたので、開始は11時くらい。出来上がったのは19時くらいだったと思います。これまで制作したことがあるのは、大きくても50号(1167×910mm)くらい。今回のようにこんな大きな作品は初めてだったので、お昼くらいにはクタクタになってました(笑)。
金﨑さん:作品はTSUTAYAさんの営業時間中に作成しました。児童書のコーナーの前の壁だったので、たくさんの子どもたちが作品を作っていくのを見ていました。
松本さん:制作するときは、離れて見たときの印象を大切にしました。素材が毛糸だったので、1本では離れたときによく見えません。何本くらい一緒に使うか、また、それぞれの色の組み合わせが見にくくないかなど、制作しては離れたところから見て確認する、を繰り返しました。
金﨑さん:デザインしたときと、実際に制作したときでは印象が変わって、その場で変更したこともけっこうありました。
本を読むことで世界が広がることを伝えたい
◆:制作した作品を見て、なにか感想をもらったりしましたか?松本さん:出来上がった作品をみて「本を読むことで自分の知識がいろんな分野で編まれていくってことなんだね」とTSUTAYAの担当の方におっしゃっていただきました。自分たちが思ったように感じてもらえたなとうれしくなりました。直線だけでどこまでできるか心配でしたが、ここまでできるんだな、と思いました。
辛川さん:アートに興味がない人も含めた多くの人に作品を見てもらう、という経験は初めてでした。「見てもらう」「外に出す」という意識をもつことを初めて体験して、これからの作品づくりも少し変わってくるかもしれないと感じています。
◆:作品を見に来るお客様にメッセージをお願いします!
辛川さん:本と言うと分厚いとか、活字がたくさんで難しいというイメージがあるんじゃないかなと思います。私もそうだったんですが、まず一冊読んでみようという気持ちになりにくいんじゃないでしょうか。でも、この作品には、花や鳥、車などカラフルで、分かりやすいモチーフを並べています。本の中には楽しい世界がわかりやすく広がっていく、というように意識を変えたら、本はもっととっつきやすいものになるんだよ、ということを感じてほしいですね。
金﨑さん:本屋にこんな作品があるということはなかなかないと思うので、たくさんの人に見てもらい、自由に想像して楽しんでもらいたいです。
(2021年1月18日掲載)