自身の留学経験を生かしながら、熊本大学をインターナショナルな大学へ
日本人学生の国際化に注力するグローバル戦略
健児くん(以下、◆):理事として担当している業務を教えてください。
大谷理事:私の担当は「研究」と「グローバル戦略」です。研究は大学での研究を推進していくこと、グローバル戦略は熊本大学をインターナショナルな大学へするために、国際化を推進していくことです。
熊本大学は、研究大学強化促進事業(RU22)、スーパーグローバル大学創成支援(SGU)、また地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)に採択され、国際的な研究拠点に加えて、グローバル化の推進かつ地域への貢献を実践する大学です。RU22の下では、2つの国際研究機構を設立し、世界レベルの研究を推進すると共にURAの積極的な育成を行っています。またSGUでは新たなグローバルリーダーコース(GLC)を設立することで日本人学生のグローバル化を推進し、COC+においては熊本創生推進機構を立ち上げ、産学連携を推進しています。
大学の国際化と言えば、留学生をどう受け入れていくかということで、国は留学生の受入れ人数を増やす計画を立てました。その一方で、日本人学生の国際化は進んでいません。私がアメリカに留学した1984年ごろの日本人の留学生数は、約1万人強。それから増え続けたのですが、現在は頭打ちで10万人程度です。確かに、現在は日本の研究レベルが上がり、わざわざ海外に行かなくても最先端の研究をすることができます。しかし、海外の研究を学ぶだけが留学ではありません。留学して、外から自分の国を見つめることが大事なんです。そのマインドを学生にどう伝えていくかが、グローバル戦略の一つの課題です。
◆:グローバル戦略で、どんな取り組みを行っていく予定ですか?
大谷理事:2つの柱があります。1つ目は、日本人学生の国際化。語学力はもちろん、マインドもインターナショナルにする必要があります。2つ目は、留学生施策。人口減少問題等を解決するためにも、日本のことを考えられる人材を育てなければなりません。
具体的には、もっと教育に力を入れなければならないと考えています。熊本大学では、大学院には英語で講義をするプログラムがありますが、学部にはありません。学部に英語のコースを作って、日本人学生も留学生も一緒に育てていきたいと思っています。どちらも同じstudentsなのですから。
そして、やはり実際に海外へ行くこと。他大学では、全学生を海外へ留学させる戦略を立てていますが、このような戦略が必要だと考えています。
装置を使って地盤の内部構造を解明する研究に取り組む
◆:普段はどんな研究をされていますか?
大谷理事:専門は、土木工学の中の土質力学や地盤工学と呼ばれる分野です。建物の下にある地盤について、地すべりや地震、液状化現象などで地面がどう動くのか、という研究を行っています。
熊本大学に来てからの特に印象深い研究は、X線CTスキャナーを使って、外から荷重をかけたり、水を流したりしたときの地盤の内部構造を解明したことです。災害現場等に行ったときに、地盤の中の様子までは見えません。これが見えるようにできないか、と考えたのが研究の始まりです。
熊本大学には、産業用の大型装置から、マイクロ、ナノといった非常に小さなものに対応できる3台のCTスキャナーがあります。世界からも注目されているんですよ。
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思ったことは実現できる
◆:先生は、どんな学生でしたか?
大谷理事:学部は「野球部」、学科は「ピッチャー科」でした(笑)。それくらい野球に没頭しましたね。小学生のころから野球をしていて、インカレではピッチャーとして全試合完投で準優勝しました。
留学したいと思ったのは、勉強のためもありますが、人として見識を広げるため。私は、山口県萩市の生まれですが、地元で有名な吉田松陰先生の言葉に「飛耳長目」というものがあります。遠くのことを見聞きする耳と目、つまり情報が大事ということです。この言葉に刺激されました。
◆:学生のみなさんへ一言お願いします!
大谷理事:私が学生時代に恩師に言われたことですが、「思ったことは、必ず実現できる」。ちょっと難しそうと思われるようなことも、思えば実現できます。自分の人生を振り返ってみても、留学も含め、思ったことは実現しています。
熊本大学には、ぜひ留学に興味のある学生さんに来ていただきたいと思っています。
(2022年5月19日掲載)