修行は一生!“剛柔一体”で全国を目指す

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48年の伝統と技で目指す人づくり

image_02.jpg 昨年8月、「2013少林寺拳法世界大会 in Osaka,Japan」が大阪で開催されました。参加国数22カ国、参加人数3,000名という大きな大会。その会場に、全国一次?二次予選で敗れ、惜しくもこの大会への出場を逃した熊大少林寺拳法部員たちの姿がありました。各国の競技者たちをじっと見つめる部員たちは、世界大会出場に後一歩届かなかったその悔しさを胸に帰熊。今年度の目標に掲げた「全九州学生少林寺拳法大会総合優勝」に向けて新たなスタートを切りました。
男子19人?女子5人、総勢24人をけん引するのは、46代主将を務める文学部3年?西本紘大さん。1年の部員たちが48代であることから分かるように、熊大少林寺拳法部は設立から50年近い歴史を刻み、伝統を受け継いできました。「少林寺拳法と他の武道との大きな違いは、“人づくり”を目的としている点です。少林寺拳法が創始されたのは昭和22年(1947年)。『戦後のすさんだ日本を変えるには、“人”から』と開祖?宗道臣氏が“人づくりの行”を創始しました。健全な肉体と人格を身につけて、個人の幸福な人生だけでなく平和で豊かな社会を実現する“人”に成長することが少林寺拳法の目標なんです」。
礼儀を重んじること、そして女性でも屈強な男性を倒すことができる技法を学ぶ部活動の現場に、OBの先輩方も指導に訪れるとか。「修行は一生」という西本さんの言葉が、スポーツとは一線を画す少林寺拳法の魅力を表しています。「6代や7代という大先輩が来てくださると、身が引き締まる思いです。これまで受け継がれてきた伝統を守るプレッシャーもありますが、先輩方が築いてきた伝統を崩さずに、私たちが得たものをさらにプラスして行けるように心掛けています」。

人格を高め、技を磨く、修行に終わりなし

image_03.jpg 少林寺拳法部の修行の場は、大江総合運動場体育館の一角です。黒帯の先輩たちの胸を借りて技を磨く後輩たちは、“見習い”と呼ばれる白帯から始まり、級が上がるごとに緑から茶帯へと昇進していきます。「少林寺拳法は、技が多い上にその技の一つ一つが奥深い」と語る西本さん。少林寺拳法の技には、相手に腕を掴まれたり、背後からの攻撃に対して“抜き”や“投げ”などの技を使う「柔法」と“突き”や“蹴り”などの攻撃に対する守備反撃方法である「剛法」があり、それぞれの特長を生かし、組み合わせる“剛柔一体”で、効果を倍増させるといいます。「例えば関節技では、同じように技を掛けても“決まる”人もいれば“決まらない”人もいます。技一つとっても終わりがないんですよ」。
現在週に一度、部の指導を行っているのは熊大OBの正範士八段?古閑忠夫先生。全国に名を馳せる著名な方から指導を受けることを誇りに、日々研さんを積んでいます。武術の向上はもちろん、人間形成の指導に力を入れているという古閑先生の教えは、「基本が大事」。人格を高め、部員たちが社会に出て恥をかくことのないように、そして仕事やさまざまな活動を円滑に進めていける力が身に付くようにと、少林寺拳法だけでなく、人としての基本を説き、時には厳しい声も飛び交います。「先生がおっしゃることは、社会に出たときに生きてきます。上司に対する礼儀や態度など、今学べることに感謝しています」と西本さん。自ら先生の言葉を実践する一方で、後輩たちに指導しなければならないため、常に後輩に対して恥ずかしくない行いをと自身を律することも大切な修行の一つなのです。

新たな伝統を築いて次の世代へ

image_04.jpg 全国から強豪が集まる「全日本学生大会」出場は、6年ぶりのこと。これまで春秋に開催される三つの地方大会に焦点を当てて取り組んできましたが、「全国のレベルを知りたい」と出場を決意しました。西本さんは「私たちは熊本では“強い”と評価してもらっていますが、全国はおろか九州でも無名。まずは全国の舞台に立つことが、自分たちの力を知ることになるので、強豪チームの胸を借りるつもりで参加しました」とその思いを語ります。
12月1日(日)、満を持して臨んだ「全九州学生少林寺拳法大会」。先に出場した「全日本学生大会」の男子弐段以上組演武の本選でほぼ最下位だった演武が、九州内では1位に、総合の部では5位の成績を収めました。西本さんは「例年にないほど、今年はよい成績を納めることができました」と胸をなでおろす一方で、目標とした総合優勝を手にできなかった悔しさをにじませます。しかし、大会に出場して多くの気付きを得たことを、部員たちの一歩成長した姿が物語っていました。「九州内で1位という成績はうれしいことですが、全国に目を向けた時、まだまだ自分たちの、九州の実力が低いということを思い知らされます。もっと熊大を、九州を強くしていきたいですね」。
部員全体が一丸となって立ち向かった大会を通して、それぞれが自信を手にしたのは事実。これまで福岡勢に圧倒されていたプレッシャーに打ち勝ち、九州最強の称号を手に入れたことで、熊大も福岡勢に太刀打ちできるということが証明されたのです。
現在の幹部は2月で引退となり、残りわずかな期間で、後輩にこれまで学んできた全てを引き継ごうと、より一層厳しい修行の日々がスタート。伝統を引き継ぐ者と受け継ぐ者の思いが、少林寺拳法部の次の歴史を刻み始めています。


(2014年1月9日掲載)

引用
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