財政制度等審議会における財務省提案に関する声明


財政制度等審議会における財務省提案に関する声明

平成27年11月13日
国立六大学連携コンソーシアム
千葉大学 学長 徳 久 剛 史
新潟大学 学長 高 橋   姿
金沢大学 学長 山 崎 光 悦
岡山大学 学長 森 田   潔
長崎大学 学長 片 峰   茂
熊本大学 学長 原 田 信 志

我々国立六大学は、旧制医科大学を引き継いだ新制大学として戦後の昭和24年に設置され、現在ではそれぞれの大学が学生数1万人以上の総合大学となり、各地域の高等教育の中核として有為な人材を育成してきている。また、近年の日本の急速な少子高齢化と財政難の中でも、国立大学は更なる機能強化を強く進めており、知の拠点として世界的な研究成果やイノベーションの創出、グローバルに活躍できる人材の育成などに向け、大学改革を主体的に進めてきている。このような状況で、先般の財政制度等審議会財政制度分科会において財務省から、国立大学は平成28年度から運営費交付金を毎年1%減額し、その減額分に見合う自己収入を毎年1.6%増やすことが提案された。

すでに国立大学は平成16年の法人化以降、12年間で運営費交付金が1,470億円(約12%)減額されている。このような急激な運営費交付金の減額は、人件費の減額として若手教員の新規採用の減少と非常勤教員の増加に繋がり、結果として優秀な人材の確保や教員の研究時間の確保に支障が生じており、大学全体の運営基盤とともに教育研究機能は急激に脆弱化している。さらに、医師の養成とともに特定機能病院として最先端の医療を提供している附属病院に関しても、消費税増税等の影響により非常に厳しい経営環境にさらされており、附属病院を持つ国立大学は危機的な財務状況に陥っている。

このような状況の下において、継続的に運営費交付金を削減することは、日本の高等教育の中核を担う国立大学が壊滅的な機能不全に陥り、結果として我が国に将来にわたり計り知れないほど大きな損失を与えかねない。

また、運営費交付金の削減分を自己収入の増加により補うという提案は、授業料の大幅な引上げに繋がりかねず、現下の国民の経済状況からみても教育格差の更なる拡大に繋がり、各地域における教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという国立大学の使命が十分に果たせなくなることを強く危惧している。

国立大学は、このような急激に悪化した財政状況の下にも関わらず、学長のガバナンス改革を実行し社会を変革するエンジンとしての大学へと改革を着実に進めている最中である。そのような時に、今回のこのような提案が表明されたことについては、あまりにも配慮を欠いたものであり、教職員の改革に対する熱意や将来への希望を奪うものと懸念するところである。

現在、国の財政状況が極めて厳しい状況におかれていることは十分に認識している。しかしながら、新興国の台頭によりあらゆる分野で国際競争が激化していく中、我が国の知識基盤社会を支える国立大学が、教育研究の質を担保しながら各地域において高等教育の機会を提供し、有為の人材を育成し、かつ、イノベーションの創出を目指していくことは、日本の持続的発展を支えるために必須であると考える。そのため、国立大学への基盤的経費である運営費交付金の投資は必要不可欠なものであり、その継続的な削減方針への反対について、関係者のご理解とご協力をお願い申し上げるものである。

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