植物の細胞分裂の動画解析で新発見~細胞の仕切りを生み出す隔膜形成体の形を「アクチン繊維」が制御~
【ポイント】
- 顕微鏡の動画解析によって植物の細胞分裂時に出現する隔膜形成体*1の誕生直後の形をアクチン繊維*2が制御していることを発見しました。
- これまでは見逃されていた細胞分裂におけるアクチン繊維の役割を、動画解析技術を活用することではじめて見出すことができました。
- 今回の発見をきっかけに、細胞分裂のメカニズムの理解がより一層深まることが期待されます。
【概要説明】
熊本大学国際先端科学技術研究機構の檜垣匠准教授を中心とした研究グループは、顕微鏡の動画解析によって、植物の細胞分裂時に出現し、細胞の仕切りを作り出す役割を持つ隔膜形成体の誕生直後の形をアクチン繊維が制御していることを発見しました。
この研究は、植物細胞の分裂を動画で撮影し、隔膜形成体の振る舞いを詳しく解析しているときに、30秒ほどのごく短時間のみで観られる変化に気付いたことが発端でした。植物の細胞分裂のメカニズムについては従来も盛んに研究が行われていましたが、本研究グループによる精密な動画解析によって、これまでは見逃されていたアクチン繊維の役割をはじめて見出すことができました。
本研究を発端に、アクチン繊維が「どのように」「何のために」隔膜形成体の誕生直後の形を制御しているのかを調べる研究も始まりました。今後、生物の最も基本的かつ重要な現象である細胞分裂の仕組みがより詳細に解明されることが期待されます。
本研究成果は令和2年2月7日午前9時(日本時間)に科学雑誌「Plant and Cell Physiology」オンライン版に掲載されました。本研究は文部科学省科学研究費助成事業の支援を受けて実施したものです。
【用語解説】
*1 隔膜形成体: 植物の細胞質分裂のために出現する細胞構造体。微小管やアクチン繊維といった細胞骨格に加えて、小胞体などの膜系の細胞内小器官などから構成される。英語はphragmoplast であり、日本語でも「フラグモプラスト」と表記される場合も多い。
*2 アクチン繊維: 細胞の骨組みとなる構造体( 細胞骨格) の一種。アクチンというタンパク質が集まってできるらせん状の繊維。筋肉の細胞に多く含まれることで有名だが、それ以外の細胞にも多量に存在しており、形態変化や運動など細胞の様々な活動に欠かすことのできないものである。
【論文情報】
論文名:Actin Filament Disruption Alters Phragmoplast Microtubule Dynamics during the Initial Phase of Plant Cytokinesis
著者:Keisho Maeda, Michiko Sasabe, Shigeru Hanamata, Yasunori Machida, Seiichiro Hasezawa, Takumi Higaki* (*責任著者)
掲載誌:Plant and Cell Physiology
doi:10.1093/pcp/pcaa003
URL:https://academic.oup.com/pcp/advance-article/doi/10.1093/pcp/pcaa003/5716757
【詳細】
プレスリリース(PDF407KB)
熊本大学国際先端科学技術研究機構
担当:檜垣 匠(准教授)
電話:096-342-3975
e-mail:thigaki※kumamoto-u.ac.jp
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