巨大な圧電応答を示す材料の開発に成功 ~高密度エネルギーハーベステング材料として期待~
【ポイント】
- 本研究では、CaとZrを共ドープしたチタン酸バリウムのナノポーラス薄膜において、巨大な圧電応答を観測しました。
- 今回対象としたナノポーラスBa85Ca0.15(Ti0.9Zr0.1)O3薄膜では、圧電特性を示す圧電歪定数d33が約7500 pm V-1を示し、従来の代表的な鉛系圧電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(lead zirconate titanate (PZT))セラミックスより一桁以上大きな値を示しました。
- 本成果は、化石燃料に代わる再生可能エネルギーとして、高密度エネルギーハーベスティングへの新たな道を開くものであることが大きく期待されます。
【概要説明】
熊本大学大学院先端科学研究部の寺澤有果菜助教と名古屋大学大学院工学研究科の山内悠輔卓越教授、The University of QueenslandのMd. Shahriar A. Hossain准教授の研究グループは、ナノポーラスBa0.85Ca0.15(Ti0.9Zr0.1)O3薄膜の合成に成功し、巨大な圧電応答の発現を観測しました。
本研究成果は、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の発行するChemical Science誌に2024年5月20日に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 総括実施型(ERATO) JST-ERATO 物質空間テクトニクス、熊本大学共同研究支援事業の支援を受けて行われました。
?【今後の展開】
機能性材料を開発するうえで構造制御は非常に重要です。構造制御には多 様な手法があり、本研究はナノレベルでの構造制御により圧電特性を向上 し、従来の代表的な圧電体である鉛系PZTセラミックスを凌駕する材料の開 発に成功しました。近年、熱や振動など密度の低い多様なエネルギーを効率 よく収集して電気エネルギーに変換する「高密度エネルギーハーベスティン グ」が注目されています。本成果は、化石燃料に代わる再生可能エネルギー として、高密度エネルギーハーベスティングに大きく貢献することが期待さ れます。
【論文情報】
論文名:Giant Piezoresponse in Nanoporous (Ba,Ca)(Ti,Zr)O3 Thin Film
著者:Motasim Billah, Yukana Terasawa*, Mostafa Kamal Masud, Toru Asahi, Mohamed Barakat Zakaria Hegazy, Takahiro Nagata, Toyohiro Chikyow, Fumihiko Uesugi, Md. Shahriar A. Hossain* and Yusuke Yamauchi*
掲載誌:Chemical Science
doi:10.1039/d3sc06712b
URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/sc/d3sc06712b
【詳細】 プレスリリース(PDF603KB)
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