細胞の骨組みの状態を高感度に測る技術を開発

【ポイント】

  • 細胞の骨組み(細胞骨格)の束化状態を高感度に計測する顕微鏡画像解析技術を開発しました。
  • さまざまな生物試料や顕微鏡を用いた性能評価試験の結果、高い汎用性が実証されました。
  • 本技術により、細胞骨格の束に関連するさまざまな細胞現象の理解が飛躍的に進むことが期待されます。

【概要説明】

 熊本大学国際先端科学技術研究機構の檜垣匠准教授を中心とした研究グループは、顕微鏡画像から細胞の骨組み(細胞骨格)の束がどの程度形成されているか高感度に定量評価する技術を開発しました。

 細胞骨格はタンパク質でできた繊維状の細胞内構造であり、細胞の形づくりや運動を担います。これまで、細胞骨格の状態を解析する場合、細胞骨格の顕微鏡画像を研究者が「観る」ことで判断を下すことが一般的でした。しかし、この方法は研究者の主観的な判断に基づくため客観性に欠けることや解析すべき画像の枚数が膨大になった場合に人的コストがかさむことなどが問題でした。本研究グループは、顕微鏡画像解析技術を使って細胞骨格の状態を「自動的に測る」手法の開発に取り組んできました。

 今回、研究グループは細胞骨格の束に着目し、その形成の程度を数値で評価する高感度計測技術を開発しました。さまざまな生物試料や顕微鏡を用いた性能評価試験を重ねた結果、本技術は本研究グループが10年前に報告していた方法よりも感度?汎用性の両面で優れていることが実証されました。本技術により、細胞骨格の束の形成に関連するさまざまな細胞現象の理解が飛躍的に進むことが期待されます。

 本研究成果は令和2年12月21日午後7時(日本時間)にオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。本研究は文部科学省科学研究費助成事業および熊本大学IROAST Research Unit ‘Quantitative Bioimaging’の支援を受けて実施したものです。

 

【今後の展開】

 本技術によって、より多様な顕微鏡画像から細胞骨格の束化の定量評価が可能となり、細胞骨格の高次構造に基づく細胞の理解が飛躍的に進むことが期待されます。また、特に安価な顕微鏡装置で取得した不鮮明な画像からでも細胞骨格の束化を正確に計測することができるため、これまで十分に活用することのできなかった膨大な顕微鏡画像データを再解析することで新しい知見が得られる可能性もあります。

【論文情報】
?論文名:Coefficient of variation as an image-intensity metric for cytoskeleton bundling
?著者名:Takumi Higaki*, Kae Akita, Kaoru Katoh (*責任著者)
?雑誌名:Scientific Reports
?doi:10.1038/s41598-020-79136-x
?URL:https://doi.org/10.1038/s41598-020-79136-x?

【詳細】

?プレスリリース本文(453KB)

お問い合わせ
熊本大学国際先端科学技術研究機構(IROAST)
担当:檜垣 匠
電話:096-342-3975
e-mail: thigaki※kumamoto-u.ac.jp
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