「ハダカデバネズミ」における協調的子育ての仕組みを解明~働きネズミは女王の糞を食べてベビーシッターとなる~
【ポイント】
- 真社会性(注1)のハダカデバネズミの群れでは、働きネズミが女王の仔を育てます。働きネズミは女王の出産後に、女王の仔の鳴き声に特異的な反応を示します。
- 働きネズミに妊娠期の女王の糞、また非妊娠期の女王の糞にエストロゲンを混ぜて食べさせると、働きネズミのエストロゲンレベルが上昇して仔の鳴き声に反応するようになります。
- ハダカデバネズミにおける協調的な子育てメカニズムを見出すとともに、性ホルモンが他個体の行動を変化させるというホルモン作用の新たな概念を提供する発見です。
注1)主にハチやシロアリで見られる社会性で、群れの中の女王と呼ばれる1 匹のメスだけが繁殖を行う。
【発表概要】
麻布大学大学院獣医学研究科博士課程の度会晃行、茂木一孝准教授、菊水健史教授と慶應義塾大学?北海道大学?熊本大学大学院の研究チームは、哺乳類では珍しい真社会性のハダカデバネズミの群れにおいて、自身は繁殖しない働きネズミが女王の妊娠期の糞を食べて母性を高め、女王が仔を出産後にそのベビーシッターとなることを発見しました。また、これは女王の糞に含まれるエストロゲンの作用であることもわかりました。本研究成果はハダカデバネズミの巧妙な協調的子育てメカニズムを明らかにするとともに、子育て行動の進化を考えるうえで重要な発見といえます。また、哺乳類において糞中のホルモンが他個体の行動を制御することを示した初めての例です。この成果は2018 年8 月27 日(米国東部時間)に米国科学アカデミー紀要 [Proceedings of the National Academy of Sciences of the UnitedStates of America (PNAS)]の電子版に掲載されます。
【論文情報】
タイトル:Responses to Pup Vocalizations in Subordinate Naked Mole-Rats Is Induced by EstradiolIngested through Coprophagy of Queen’s Feces
著者:Akiyuki Watarai, Natsuki Arai, Shingo Miyawaki, Hideyuki Okano, Kyoko Miura, Kazutaka Mogi, andTakefumi Kikusui
掲載雑誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
【特記事項】
本研究は、独立行政法人日本学術振興会の「科研費(#26292167、#23248049、#25118007、#15H02479)」および「先端研究助成基金助成金(最先端研究開発支援プログラム)」の支援により行われました。
【詳細】
? プレスリリース本文(PDF743KB)
麻布大学 総務部 広報?IR室
担当:池田?榊田
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