鉄と腸内細菌が大腸がんの進行を早める仕組みを解明 ?新たな予防法?治療法開発に期待?
【ポイント】
- 歯周病の原因菌として知られるフソバクテリウム?ヌクレアタムという細菌が腸内に感染した大腸がん患者では、全身の鉄量が多いと生存率が低下する。
- がん組織に蓄積した鉄は免疫細胞による炎症応答を増悪させ、がんの進行を早める。
- 本研究成果は、鉄と腸内細菌に着目した大腸がんの新たな予防法?治療法開発につながることが期待される。
【概要説明】
熊本大学大学院生命科学研究部の諸石寿朗教授、馬場秀夫教授、山根大侍特定研究員らの研究グループは、歯周病の原因菌として知られるフソバクテリウム?ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)という細菌が腸内に感染した大腸がん患者において、全身の鉄量が多いと生存率が低下してしまうことに着目し、過剰な鉄ががんの進行を早めるメカニズムを明らかにしました。これまで、フソバクテリウム?ヌクレアタム細菌感染や鉄過剰は一般にがんの進行に関連すると考えられてきましたが、大腸がんにおけるそれらの関係性は分かっていませんでした。本研究グループは、フソバクテリウム?ヌクレアタム細菌感染に加えて体内鉄量が増加すると大腸がんの進行が早まることを明らかにし、そのメカニズムとして、がん組織に蓄積した鉄が免疫細胞による炎症応答を増悪させることを見出しました。このことは、鉄と腸内細菌による大腸がん進行メカニズムの一端を明らかにしたものであり、大腸がんの新たな予防法?治療法開発につながることが期待されます。本研究成果は令和4年11月8日に米国科学雑誌「JCI insight」に掲載されました。
※本研究成果は、文部科学省科学研究費助成事業(21H02764, 20H03755)、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)?生体組織の適応?修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出?研究開発領域における研究開発課題「異常細胞の除去?修復応答に関わる多細胞ネットワークの解明と制御」(JP22gm6210030)、公益財団法人内藤記念科学振興財団、公益財団法人上原記念生命科学財団、公益財団法人稲盛財団、公益財団法人第一三共生命科学研究振興財団、公益財団法人日本応用酵素協会の支援を受けて実施したものです。
【論文情報】
- 論文名:Iron accelerates Fusobacterium nucleatum-induced CCL8 expression in macrophages and is associated with colorectal cancer progression
- 著者名:Taishi Yamane, Yohei Kanamori, Hiroshi Sawayama, Hiromu Yano, Akihiro Nita, Yudai Ohta, Hironori Hinokuma, Ayato Maeda, Akiko Iwai, Takashi Matsumoto, Mayuko Shimoda, Mayumi Niimura, Shingo Usuki, Noriko Yasuda-Yoshihara, Masato Niwa, Yoshifumi Baba, Takatsugu Ishimoto, Yoshihiro Komohara, Tomohiro Sawa, Tasuku Hirayama, Hideo Baba, and Toshiro Moroishi
- 掲載誌:JCI insight
- doi:https://doi.org/10.1172/jci.insight.156802
- URL:https://insight.jci.org/articles/view/156802
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【詳細】 プレスリリース(PDF1092KB)
お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部
シグナル?代謝医学講座
担当:教授 諸石 寿朗
電話:096-373-5173
E-mail:moroishi※kumamoto-u.ac.jp
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