大腸腺腫症の発症を抑えるタンパク質がDNAのミスマッチを修復する仕組みを原子レベルで解明
【ポイント】
- 大腸腺腫症の発症を抑えるタンパク質MUTYHの立体構造を原子レベルで解析し、MUTYHがDNA中に生じた酸化塩基8-オキソグアニンに誤対合 (ミスマッチ) したアデニンを除去修復する仕組みを明らかにしました。
- MUTYHをミスマッチ部位に呼び込むタンパク質PCNAとMUTYHの複合体の立体構造を解析し、MUTYHとPCNAが協力してDNA中のミスマッチを修復する仕組みを明らかにしました。
- MUTYHの立体構造解析から、家族性大腸腺腫症の原因となるMUTYH遺伝子の変異が、MUTYHのDNA修復活性をどのように低下させるかを原子レベルで説明しました。
【概要説明】
熊本大学大学院先導機構/大学院薬学教育部の中村照也准教授、九州大学生体防御医学研究所の中別府雄作教授、熊本大学名誉教授で尚絅大学?尚絅大学短期大学部の山縣ゆり子学長の研究グループは、1) 大腸腺腫症の発症を抑えるタンパク質MUTYHのX線結晶構造と、2) MUTYHとDNAの合成 (DNA複製) に関わるタンパク質PCNAの複合体のX線結晶構造を解析し、MUTYHがPCNAと協力してDNA中のミスマッチを修復する仕組みを原子レベルで明らかにしました。また、MUTYH遺伝子の変異が、どのようにMUTYHのDNA修復活性を低下させるかを原子レベルで説明しました。MUTYH遺伝子の変異は家族性大腸腺腫症の原因となるため、本研究の成果は今後の家族性大腸腺腫症の研究に役立つことが期待されます。
本成果は、令和3年6月18日 (金) 午前9時5分 (日本時間) に英国の科学誌Nucleic Acids Researchオンライン版に掲載されます。本研究は、日本学術振興会卓越研究員事業、科学研究費補助金、住友財団、武田科学振興財団、加藤記念バイオサイエンス振興財団、熊薬研究助成会の支援を受けて実施されました。
【展開】
? MUTYHとPCNAは、DNA修復に関わる様々なタンパク質と働くことが知られているため、本研究で明らかにした立体構造は、MUTYHとPCNAを中心としたDNA修復機構をさらに理解する上での基盤となることが期待されます。また、MUTYHとDNAの原子レベルの立体構造については、今後の家族性大腸腺腫症の研究に役立つことが期待されます。
【論文情報】
論文名:Structure of the mammalian adenine DNA glycosylase MUTYH: insights into the base excision repair pathway and cancer
著者:Teruya Nakamura (責任著者), Kohtaro Okabe, Shogo Hirayama, Mami Chirifu, Shinji Ikemizu, Hiroshi Morioka, Yusaku Nakabeppu & Yuriko Yamagata
掲載誌:Nucleic Acids Research
doi:https://doi.org/10.1093/nar/gkab492
?【詳細】 プレスリリース(PDF449KB)
お問い合わせ
熊本大学大学院先導機構/大学院薬学教育部
担当:准教授 中村 照也
電話:096-371-4638
E-mail:tnaka※gpo.kumamoto-u.ac.jp
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